無言症のページ

1.  無言症とは?

無言症とは、話すことが全くできない障害です。声を出す、話をする、ということに関して、全く不可能になります。話す意欲そのものがなくなる場合もあります。無言症は定義があいまいで、あまり病院の現場でも使われない言葉なのですが、全失語や痴呆と診断されている人の中には、明らかにそうではなく、単に「しゃべれない」人がいますので、あえてここで「無言症」として取り上げました。正確には「無言状態」というべきでしょう。無言状態は様々な障害部位や原因によって起こっていると思われます。より重症の場合は体も全く動かず声を出すことも話すこともできない状態になり、脳の障害された場所や症状の違いによって無動性無言、失外套症候群、閉じ込め症候群などと呼ばれています。

2.  無言状態の原因

-無言状態は様々な原因によってもたらされます。 -

        無言症:脳卒中などで脳の特定の部分が障害されると起こります。多くの場合、運動性の失語(失語症のページ参照)と合併しますが、聴覚的理解力は保たれています。

        痴呆:アルツハイマー病などの痴呆性疾患では、末期には全くの無言状態になることがあります。対人関係を維持する能力が欠けた状態です。多くの場合ここに至るまでに痴呆に伴う多彩な症状が現われます。

        意識障害:様々な疾患による重症の意識障害(昏睡)の場合にも無言となります。意識状態に変動がある場合には、覚醒しているときには普通に話せることさえ少なくありません。

        無動性無言:脳卒中などで脳の特定の部分が障害されると起こります。起きているときは眼が開いていますが、全く動かず、全く話さない(声さえ出さない)状態ですが、こちらの手の動きを追って眼を動かすこと(追視)が多いです。

        失外套症候群:脳卒中などで脳の特定の部分が障害されると起こります。起きているときは眼が開いていますが、全く動かず、全く話さない(声さえ出さない)状態で、追視さえなく、視線が固定しています。

        閉じ込め症候群:顔面の筋肉や手足の筋の完全麻痺のために、全く動かず、全く話さない(声さえ出さない)状態ですが、まぶたの開け閉めや目線によって意思を伝えることが可能です。喜怒哀楽の表情も保たれていることが多いです。言語聴覚士のいない病院では全失語や意識障害と診断されている患者さんの中にたいてい一人や二人は混じっています。

        パーキンソン病など:脳内で筋肉の運動を調節する物質が不足するために筋肉が動かなくなったりこわばったりする病気がパーキンソン病などいくつかあります。これらの病気が進行すると、しゃべりにくくなり、また話す意欲も低下するため、しばしば無言状態になります。喉や顔面の筋が動かなくなっても腕や手の筋肉は動くことは珍しくなく、その場合には握手によって意思の伝達が可能です。

        筋萎縮性側索硬化症など:筋肉の運動を司る神経が冒されるためにしゃべれなくなり、ついには声も出せなくなる病気が筋萎縮性側索硬化症などいくつかあります。眼の運動と肛門の筋肉は、全身が動かなくなっても保たれていることがほとんどで、瞬き、目線、肛門の開け閉めなどによって意思を伝達することができます。

3.  それだけでは無言状態にならない障害

-失語症と違い、無言症では、脳の内部の言語には異常がない場合があります。しかし、「しゃべれない」ということから、様々な障害と間違われやすいです。 -

・失語症:無言症は特に全失語、重症の運動性失語などと間違えられやすいものです。また、多かれ少なかれ失語症と合併しやすいので問題が一層複雑になります。見分け方としては、失語症ではどんなに重症のものでも何らかの(たとえ意味不明でも)言葉を話せるものですが、無言症では全く話せません。声すらも出せません。聴覚的理解の障害が疑われて、かつ全く声も出さない人は失語症と無言症を合併していることが考えられます。詳しくは失語症のページをご覧ください。

・失声症:失声症のほとんどは心理的原因によるものです。声は出ませんがよく観察するとちゃんと言葉を話しています。また、筆談などで自分の意思をしっかりと他人に伝えることができます。

・構音障害:重症の構音障害ではしゃべることが不可能になりますが、言葉が聞き取れないだけで、声が出せないということはありません。詳しくは構音障害のページをご覧ください。

4.無言状態のリハビリテーション

−無言状態、特に、手足も動かず無言、呼びかけにも反応がなく無言、という場合には重症の疾患が背景にある場合が多いので、リハビリテーションといってもなかなか難しい場合が多いです。少なくとも「話せるようになるか」という問いには否定的な答えを出さざるをえない場合がほとんどです。「何とか笑顔だけでもいいから見たい」という家族の切なる願いにさえ答えられない場合が往々にしてあります。しかし、無言状態がどのような原因によってもたらされているのか、的確に見抜くことによって、コミュニケーションへの思わぬ突破口が開けることもあります。今から説明するリハビリは、私たちよりもむしろ日常的に患者さんと接している家族や看護婦さんのものです。あきらめないでください。-

1.声掛け

 これが基本です。無言状態の患者さんは、ひょっとすると何もかも分かっているけれど意思表示ができないだけかもしれません。しゃべれない、動けない不安を取り除き、孤独感を和らげるために、声掛けは絶対に必要です。常によい刺激を与え続けることは神経組織の再編成を促すと信じましょう。よしんば残された神経同士がもう二度とつながることがなかったとしても、命の尽きる最後の瞬間まで話し掛けられ、人間らしく遇されるということは、人としての基本的な権利だと思います。当時の医学者からさじを投げられていたヘレン・ケラーが話せるようになるとは、サリバン先生以外の誰が信じたでしょうか。「もうこの人はだめだ。」とはどんな偉いお医者さんでも断言はできないのです。

2.話し言葉以外のあらゆる手段を用いたコミュニケーション(AAC:augmentative alternative communication)

 声掛けが大事だといっても、一方的な声掛けばかりではその先につながるものがありません。相手の反応が必要な「問いかけ」によって反応を確かめましょう。また、どこか自分の意志で動かせる部分はないか、全身をくまなくチェックしましょう。小指一本でも、足のつま先でも、一箇所でも指示に従って動かせるところがあったらしめたものです。すぐに言語聴覚士に知らせましょう。その人に最もふさわしいコミュニケーション手段を探し、それを使うための訓練をしてくれるはずです。あなたの大事な人が言語聴覚士のいない病院に入院されている場合には筆者に連絡してください。筆者にアドバイスが可能な場合は筆者がそうします。また、筆者の恩師はAACの専門家なので、筆者の手に余る場合はそちらからアドバイスをもらいます。

 

 

 

言語障害のページに戻る

ホームページに戻る


[PR]話題の新車を無料プレゼント中:必ず当る抽選会!今すぐ応募で簡単GET